wish
部屋のなかに、掛け時計の、カチカチ、という音が響く。
いつもは気にならない音が聞こえてくるくらいに、張り詰めた空気が漂っていた。
「突然じゃない。ずっと、聞きたかったんだ」
昇は先を促すように、真面目な顔で、母を見つめ返した。
その視線に先に堪えきれなくなったのは母で、顔を背け、自分の手元に視線を落とした。
「恨んでないわよ。だってお父さんは立派にがんばってたじゃない」
「でも…」
「昇は、お父さんのこと恨んでるの?」
「……」
言葉には出さずに、小さく首を横にふる。
昇も、父を恨んでいるわけではないのだ。
ただ、何もできない自分が悔しかったから。
聞いてから少し後悔した。
もし、「恨んでいる」と母が言ってくれたら、きっと楽になれたのだ。
でも、そうではないから、こんなにも苦しい。
昇はただうつむいて、
「ごめん」
とつぶやいた。
時計の音が、まだ耳にこびりついて離れない。
いつもは気にならない音が聞こえてくるくらいに、張り詰めた空気が漂っていた。
「突然じゃない。ずっと、聞きたかったんだ」
昇は先を促すように、真面目な顔で、母を見つめ返した。
その視線に先に堪えきれなくなったのは母で、顔を背け、自分の手元に視線を落とした。
「恨んでないわよ。だってお父さんは立派にがんばってたじゃない」
「でも…」
「昇は、お父さんのこと恨んでるの?」
「……」
言葉には出さずに、小さく首を横にふる。
昇も、父を恨んでいるわけではないのだ。
ただ、何もできない自分が悔しかったから。
聞いてから少し後悔した。
もし、「恨んでいる」と母が言ってくれたら、きっと楽になれたのだ。
でも、そうではないから、こんなにも苦しい。
昇はただうつむいて、
「ごめん」
とつぶやいた。
時計の音が、まだ耳にこびりついて離れない。