奪うなら心を全部受け止めて


「今夜、私がこの部屋に居ても…それは普通ですよね?」

「あ、えっと…そうだな。…そういう事になってる日だから、いいのかな。
…いいのかな…何だかややこしくなるね、俺が居るから」

「ややこしくないです。今日は私はここに居る日なんですから」

「…そうだね」

「パスタと、ピザ、持って来ました。あと、スイーツも。これって、ちょっとしたイタリアンでしょ?」

「そうだね」

「珈琲入れますね」

「ああ、有難う」

「…私、嬉しいんですよ?
こうして強引に来てしまいましたが、能さんと一緒にご飯食べられる事。そうだ、DVD、気がついてくれましたか?」

「ああ、やっぱりあれは佳織ちゃんが置いといてくれた物なんだね」

「はい。好みは解らなかったんですけど、…恋愛物よりはいいかと思って。
……はい、どうぞ。さあ、食べましょう」

「…そうだね。食べよう」

「はい。あ、でも、これはこれで、能さんとのイタリアンの約束は別ですからね?
私、楽しみなんですから」

「佳織ちゃん…」

「ご飯に出掛けられるなんて、…誰かと一緒にご飯食べられるなんて…考えただけでも楽しいじゃないですか。具体的な日が決まってなくても、未来に予定があるって、何だか楽しみで毎日ウキウキするじゃないですか。いつ行けるかなって」

「…佳織ちゃん」

「そりゃあ、職場の人とご飯もしますけど、職場の人は職場の人ですから…それはまた違いますから、…気持ちが」

「佳織ちゃん…」

「能さん。冷めてしまいます。食べましょう?」

「…そうだね」

いじらしいと言うか、こんな状態、目の当たりにしてしまうと切なくなってしまうな。

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