奪うなら心を全部受け止めて

段々育っていく奥様のお腹を見てるうちに、覚悟を決めている優朔は、揺れるんじゃないだろうか。親になる気持ち、愛情が…。

“子供が欲しい"。
奥様のその気持ち…凄く解る。
子供…。女ですもの。産めるなら子供が欲しいと思うだろう。
愛する人の子供…。出来るなら、愛する人の子供を産みたかったはず。

奥様は本当に優朔に何も感情はないのだろうか…。
…解らない。少しでも好意があるなら、他の人の子供なんて妊娠したくないはず。そうならないようにするはずよね。
優朔とは関係は持たない決まり。欲しくても望めない。
初めからどうにもならないと解っている事。

妊娠を知った優朔はどう思う?
わざと?優朔を困らせる為?
ううん、きっと違う。
良識のある賢い人はそんな事はしない…。

やはり、子供が欲しかったからだろう。
相手は誰であれ、…生まれてくる子供は紛れも無く自分の子供。
それしかない。
産めるなら、自分の子供、産んでおきたい…。

「佳織ちゃん?大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫です。勝手な解釈ですが…奥様の女としての気持ちが解った気がします。
間違った解釈でなければですが」

「急に来て、こんな話をして悪かったね…。
でもいずれ耳に入る事だから。知らないでいると不信につながるからね」

「はい。…大丈夫です、有り難うございます。助かりました」



改めて珈琲を入れ、ロールケーキも取り分け食べた。

「何買うの?」

「え」

「買い物、行くだろ?」

「あ、はい。食材です」

「今夜は?」

「え?あ、はい、今夜は一人ご飯ですよ?」

「じゃあ、俺の分も作って?」

「え?」

「今夜、俺と一緒に食べよう?いいよね?
ん〜、和食がいいなぁ、和食。何か作って?佳織ちゃん」

「…能さん。
解りました。では和食の食材を買いに行きましょう?献立の希望はありますか?」

「ん〜、買いながら考えよう?ゆっくり食材、見たらいいよ」

「はい。あ、優朔に…」

「大丈夫。今朝来る時、言ってあるから」

「買い物も?ご飯一緒にする事も?まだ決まってもない内に?」

「勿論だよ」

「…凄い。能さんて千里眼あるの?」

…あんな話。話せばこうせざるを選なくなる事は解っている。
成り行きで、ご飯食べたり、出掛けるよう誘うぞと言ってある。
優朔は家庭に居る日だ。頻繁に連絡を入れるのも憚れる。
俺の護るという事は、佳織ちゃんの日常を作る事でもある。一緒に居れば普通にあるであろう日常。
…代理だけどな。

「さあ、行こう。
久々にドライブスルーもしたいなぁ」

「セットで海にも行きたくなりますよ?」

「じゃあ、先にドライブスルーして海だ」

「はい。えっとそれも優朔に?」

「了承済みだよ」

「凄い。流石、出来る秘書さん!」

出来る秘書さんか…。

「あ、大変…、私まだお化粧してない。
…キャー。能さん待っててくださいね。すぐですから」

「はいはい、待ってますよ」

そのままで充分、俺は好きだけどな。
< 136 / 216 >

この作品をシェア

pagetop