奪うなら心を全部受け止めて


・佳織27歳

「お帰りなさい、お疲れ様」

「ただいま。はぁ、佳織充電させて…」

「あ、ちょ、ちょっと、優朔。待って…」

ん〜。
しな垂れかかるように優朔が抱き着いて来た。

疲れてる。細々した事は松下さんが処理してくれてるとはいえ、平常心ではないはず。
未決済の書類に承認印を押す作業とは違う。
頭を使うのと心は違うと思う。

優朔は人間だ。
今回の事、これから先の事を思えば、少なからず心を砕いているはず。

「ねえ優朔?もういい?あっち行こう?」

「…もうちょっと。はぁ、いい香りがする。
佳織の匂いだ…甘い匂いがする」

胸に顔を埋めていたかと思うと、チュッと口づけられた。

「ん、ん。ご飯食べよ?ね?
もう出来てるから」

「ん〜、解った」

ほぅ。やっと解放してくれるらしい。

「あ、だけど、やっぱりもうちょっと、欲しくなった…」

ん、んん、ん。
唇を食む。何度も食む。…もうダメ。このまま食べられ続けたら私が立っていられない。

「んん、ん、はぁ、もう…、ダ、メ!」

「ダメ?」

「うん。…」

止められなくなるから、私が。

「…後で」

「ん?」

「…後で、…一杯して欲しいから…もう、意地悪…」

「佳織…」

「もう、恥ずかしい…、ご飯食べよ?」

「…ああ。食べよう。
よし、…後で佳織も食ってやる。…後で、一杯な」

もう…、変に火を付けちゃったかも…。墓穴を掘ったわ…。

優朔から半端ない色気が漏れてる…。

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