奪うなら心を全部受け止めて

沢山愛された後、一緒に入浴しようと言われ、有無を言わさず運ばれた。ぐったりして逆上せてしまう程…浴室でもまた食べられてしまった。


「佳織。明日、早目に出るけど、朝まで居られるから」

「え、本当?本当に?嘘、早く言って…」

「ごめん、本当だよ」

リビングのソファーに座り、まったりと優朔に寄り掛かっていた。…ぐったりが正しいかも知れない。
肩を抱かれ髪を撫でられていた。
不意に頭上から降って来た言葉に驚いた。

帰国した日は別として、今まで一度だって朝まで過ごせた事はなかったから。
嘘じゃないと思っても聞き返えさずにはいられなかった。
でも、急に何故?何か、優朔の環境が変わったのだろうか。

「佳織、俺が迂闊過ぎた。今回の事、精神的に恐い目に遭わせてごめんな。本当にすまなかった」

そうだった。だから、優朔、疲れ気味の様子だったのに。
鍵…。奥様がこの部屋に勝手に入っていた事。

「俺は信用していたんだ。俺には佳織が居る。それは納得して結婚したんだ。
だから約束は守るものだと…そう思っていた。
総てにおいて、何の疑いも持たない事にしていたんだ。
それが夫婦の、相手に対する誠実さだと思ったからだ。だから、ここの鍵を敢えて完全に隠すような保管の仕方はしなかったんだ。
それが、まさか、コピーして侵入するなんて…思いもしなかった。
…裏切られた思いだったよ。
淡々とした冷たい家庭の虚しさよりショックだった。…人としての信用がなくなった事にな」

「確かに怖かったけど。実害があった訳じゃない。私が見えないモノに怯えただけ。鍵だって今は換えてるし。
…奥様の気持ち、私、解る気がしたし。
もう大丈夫だから、…優朔が謝らないで」

そう。優朔に謝られるのは嫌。奥様のした事なんだから。
夫としての立場で優朔が私に謝らないで。

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