奪うなら心を全部受け止めて


「能は良くしてくれるか?」

「え?うん。凄く気遣いをしてくれる。格好いいお兄ちゃんみたい」

「お兄ちゃん?」

「うん。優しくて、スーパーマンみたいだから」

「そうか、お兄ちゃんでスーパーマンか…」

「鍵の事というか、部屋に違和感を感じた時、怖くて何も配慮せず電話してしまったのね。仕事中なのに。
まだ何も話してない内から、急いで来てくれて」

あの時か…。俺が定例会議の最中だった時。

急な用が入ったと会長の秘書に託けて、会議室の外で控えていたはずの能がいなくなった時だ。

「急いで来たってよく解ったな」

「それがね。クスクスッ。髪が乱れてたの。
あのいつも秘書ですってピシッとした感じで整えている松下さんが、よ?」

「へぇ〜」

能がね…。余程、慌てたって事だな。

「25分くらいで着きますって言ってたのに、それより凄く早かったし。
今思えば危ない運転だったかも知れない。私ちゃんと説明しておくべきだった。
松下さんに何かあったら大変だったよね」

「ま、言ったところで変わりはしなかったはずだ」

それだけ大事。
能にとって、最優先の最重要事項だったって事だ。
あの時、能は会社の車では出なかった。何かあったらと、先読みして自分の車で出たんだろう。慌てていてもそこは冷静だ。
会社には迷惑をかけない。…出来る男だ。
だから親父が側近としてずっと付けていたのだ。親父も流石と言えば流石か…。
人を見る目がある。

そんな能を俺に付けたのはスーパーサブだからだよな。正にスーパーマンだ。

俺には、親父に居た愛人とは違う意味の愛人、佳織が居るから。
揉め事が多発すると読んでいた。
能は俺に取って、公私共、無くてはならない存在なんだ。
< 139 / 216 >

この作品をシェア

pagetop