奪うなら心を全部受け止めて
「…能がさ、佳織と出掛けていいかって、頻繁に聞いてくるんだ」
「あ、買い物とか、それでしょ?」
「ああ、そうだよ。…許可出来ると思うか?」
「え?でも、了承済みだって…」
「そりゃあ、最終的には許可するよ?佳織の為だからね。でも、喜んで承諾してる訳じゃないからな?相手が能だからと言っても…佳織と二人きりで出掛けたり、ご飯食べたりするんだ…。
そう簡単には許せない」
「優朔…」
妬いてる?
「…佳織が能の事はお兄ちゃんみたいに思ってるって解って…正直ホッとした。
ヤキモチも大概にしとくよ。大人気ないからな」
「何言ってるの…」
ヤキモチ…。
能の方はどうなんだかなぁ。正直、能は俺よりずっと大人だ。
だが、…こと恋愛に関してはどうなんだか。
人を好きになるのに冷静で居続けられるだろうか。
佳織は悪気のない無邪気さがあるからな。俺は妬いてばっかりで。
…はぁ。罪だよな。…心配だ。
「これからは前より一緒に居られる時間を増やせる。今夜みたいに佳織の作ってくれたご飯を食べられて、朝まで居られる。
毎日って訳にはいかないが。識子が今回の事で思い直してくれたなら、俺がここに居るからといって、連絡して来て帰って来てくれとは言わなくなるだろう。…そう願うよ」
優朔…もしまた前みたいに連絡が来たら、やっぱり帰ってしまうって…そういう意味よね今の言葉。だから素直に喜んでもいられない。糠喜びになると…虚しくなるのは目に見えてるから。
決して無視したりはしない。奥様のそうせざるを得ない気持ちを優先するのね…。
…識子、識子。
優朔の口からは聞きたくない名前…。奥様だから呼んで当たり前なんだけど。
能さんから間接的に名前は聞いて知っていても、やはり聞きたくはない。
優朔が奥様を識子と呼ぶ。色々…、生活を想像したくない。…嫌。家庭を見せないで。
「優朔…」
優朔の身体。しがみ着くように抱き着いた。これは…醜い嫉妬だ。…見苦しい。目茶苦茶妬いている。
この気持ち、優朔にバレてもいい。ギューッと更に抱きしめた。
「どうした?佳織…ん?あぁ…明日、休みだったらいいのになぁ。
突然有休でも取るか?それとも仮病で休むか?
俺は役員だからどうとでもなるぞ?…能がなんて言うか、能次第だけどな」