奪うなら心を全部受け止めて
安定期に入っても、優朔と長く会う事も、だだ会う事もなくなった。
ベビー用品を準備したりしてる頃かな。男の子用?女の子用?どちらでもよい色柄の物?
…このまま赤ちゃんが生まれて、私と優朔の関係はフェードアウトしていくのかも知れない。
会えなくて、話せなくて、湧き上がるのはそんな願ってもいない考え事ばかり。執着…。嫉妬。…悍ましい。
優朔の子供じゃないとしても、妊娠を知らされた時、自分から離れる事を決断していたら良かったのかも知れない…。
ううん、…そうしようかと口から出た時、能さんは言ってくれた。
優朔の思いを潰さないで欲しいって。
…信じていていいのよね?
いつかは解らない、優朔とまた会える時が来る迄、このまま待っていていいのよね?
留学していた時だって、ただ優朔を信じて待った。
思うほど切なくなって…どんなに寂しくなってもいつかは帰って来る、会えるって一途に思って待った。
そして優朔と会えた。優朔は私のところに帰ってきてくれた。
今だって、会えないだけで優朔が消えた訳じゃない。…何年も待つ訳じゃない、と思う…。
ただ大人になった分、色々解ることが増えて…辛いだけ。
赤ちゃん…。
…。
…私は、…私達の赤ちゃんは。
ブー、ブー…。あ、松下さん…。
【佳織ちゃん、元気かな?今日の予定を確認したいんだけど、これから後は何か入ってるかな?】
能さん…。
【何もありませんよ?単独行動すら、予定がありません】
そんな、出かける気分になれないから。
【だったらご飯行こうか。中華でもフレンチでもイタリアンでも、和食でも。
地中海料理なんてのはどう?迎えに行くよ。今、何処?】
【今は松下さんのマンションです】
ピンポン。え。
カチャ…。
「…はい、あ、びっくりしちゃった…」
「早かっただろ?悪いけど、ここだと思ってたから、下から連絡してた。ビンゴだっただろ?」
「松下さん……。能さん…私」
「上がるよ?いいよね?……佳織ちゃん、おいで…」