奪うなら心を全部受け止めて
夏休み前。期末も終わった。
「夏休みはどうする?海にでも行くか?」
「海?」
えー、海って言うとやっぱ水着、だよね。
「ん?海。先輩とは予定どうなってる?」
先輩は…、お泊りで会いに行く事になっている。だけど、お泊りとか詳しく言うのは恥ずかしいかも。
「えっと、飛び飛びで何日間か一緒に…です」
「そっか。じゃあ、その日は除いて行ってみるか。…果林ちゃんと直人と、ショウと西邑もいいかな?あいつら二人はにぎやかしみたいなもんだから。後で空いてる日を果林ちゃん達と相談してみて?」
「解った」
「よし、決まりな。帰りアイスでも食べるか?100%果実のジェラートってあるじゃん。旨そうだから寄ってみよう」
「うん!アイス好き」
「俺も好きだ…」
どちらからともなく自然に手を繋いだ。
少し後ろを佳織が歩く。何時もの歩き方だ。
俺が歩くのが速いんじゃない。寧ろ、合わせてゆっくり歩いている。
だけど佳織はこの距離感が好きだと言う。
解らない事もない。感覚の問題だが、この距離感の歩き方が好きな気持ち、解る気がした。
指と指を組んで“恋人繋ぎ"をしてみた。どうだ?
佳織がビクッとして、えって顔で見上げて来る。…想像通りの反応だったな。
視線を向けると、少し赤くなって、俯き加減になった。純粋だな、本当。
可愛いやつだ…。意地悪したつもりはない。
したかったから、した。
「暑いからしっかり繋ぐと嫌か?汗、気になるか?」
「ううん。…汗かいたら、なんだか恥ずかしいかも知れないけど。嫌じゃないです」
「そうか、…佳織、…あのさ」
「はい?」
「いや、いい。何でもない」
「はい」
俺は…何を言おうとしていたんだ。踏み込んだ迂闊な言葉は、関係性を崩してしまうというのに。
「あ〜、どんな水着かな〜と思って。…エロい想像?してみた」
「え、ち、千景さん。もう!…止めてください。…男子って…すぐそんな事ばっかり!」
「悪い。…ついな。ショウの病気が伝染した」
横を向いた佳織の膨らんだ頬っぺたを突いてやった。
「…もう。アイスは千景さんのの奢りにしますよ」
「はいはい、最初からそのつもりでした」
佳織の水着……全く想像しない訳ではない…。