奪うなら心を全部受け止めて
「結構です。あれ?ちょっと、直人?直人?…あいつ何処に行ったのよ。
あの、私達、連れが居るので失礼します」
「またまたぁ。彼氏居るの?何処に?
見たとこ、それらしい奴、居ないみたいだけど?」
「居ます。居るけど、今、どっかに行っちゃって」
「あ〜どこかで浮気してんじゃないのかな。
放っとかれちゃったんだよ。
そんな奴はさ、置いといて、ね、あっち行こうか。いいじゃん」
「かき氷でも食べる?行こう?」
大学生らしい。しつこく誘ってくる。動こうとすると前を塞ぐようにされた。
「…果林ちゃん、どうしよ…」
「もう、だから、居ろって言ったのに、…あいつ。役立たず。大丈夫。無視して行こう」
「…うん」
果林ちゃんと腕をからめた。
「おっとぉ。何処行くの?そっちじゃなくて、こっちだよ」
また、前を塞ぐ。
「どいてください」
「果林ちゃん…」
「大丈夫よ」
ふぅ、トイレも混んでる、混んでる。…と、え!?ヤ、ヤバい。これは、ヤバい事になってるじゃないか。慌てて走った。果林、待ってろよ。
「果…」
「俺の連れに何か用ですか?」
「キャー、千景さん!良かった。はぁ。佳織、良かったね、助かったね」
「うん」
千景さん、来てくれたんだ。
二人は手を取り合って安堵した。千景は二人の前に立って、庇うように後ろに隠した。
「は?なんだ。連れが居るってのは本当だったんだ。ごめんごめん。じゃあな。
……両手に花か?お前も高校生だろ?…随分と色男じゃないか」
くっ。この程度の嫌味…我慢…我慢だ。問題を起こすような事になったら面倒だ。
「ふぅ。二人共、大丈夫か?何もされてないか?」
「千景さん…」
「千景さ〜ん、怖かったぁ」
直人が駆け寄って来て千景に抱き着いた。
「こら直人。お前なぁ…、何してたんだ」
「あ、トイレ…行ってました…すいません。…面目ありません…」
「ふぅ、ったく…無事だったから良かったけど。だったら先にこっちに言ってから行ってくれよな」
「本当だよ、直人」
「…ごめん」