奪うなら心を全部受け止めて

「…抱きしめていいか?」

「…うん」

あ…、なんか自然に、うんって言っちゃった。…。私ったら。

日に焼けて、うっすら赤くなっている佳織の首筋に顔を寄せた。強く抱きしめた。

あ、千景さんの髪の毛。いつもくすぐったい。
…はぁ、ドキドキするよぉ。唇だと思う、くっついてるから微かに当たってるし。

「佳織?」

「ぅわっ、はい」

大きな声になった。耳のすぐ下で声がしたからびっくりしてビクッとした。

佳織…そんな純粋な反応は反則だ。次の言葉を飲み込んでしまいそうだ。

「佳織、後悔してないか?」

「え?何をですか?」

「俺とつき合ってる事。…カムフラージュ作戦」

「あ、それは。後悔なんて言葉…、選択して言うのはおかしいですよ?千景さん。迷惑をかけているのは私達ですから」

…迷惑。…私達、か…。

「後悔はしてないんだな?」

「え?はい。助けてもらってるんですから」

後悔?…。どうしてそんな確認を?…。

「俺は迷惑だなんて思った事はない。でも、…後悔はしてる」

「え」

どういう意味?もうつき合うのは嫌になったって事…そういう事だよね。
いくら先輩の頼みだからと言っても、自分の時間を潰してしまわせてるんだから。千景さんだって…自由に好きな事したいはずだよね。シヨョウさんとの楽しい時間も減らさせてる訳だし。

「佳織、俺」

「あの」

…。

ギュッと抱きしめる腕に力が増した。


「好きだ、佳織」
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