奪うなら心を全部受け止めて


ん、ん?...柔らかい。堕ちていく...。恐いのとは違う……。

「佳織?佳織...か、お、りぃ」

「う、ん...。は、い。は、い」

「ごめん。どうしても起こしたかった」

「う、ん。ごめん、寝ちゃったんだね」

「ああ、多分寝ると思った」

「...ごめん、安心したら体の力が抜けて、気も抜けちゃった」

「素直だな。寝起きだからかな?
こうして何でもない事、話したいな。いや、ずっと抱きしめていたい…佳織」

頭に口づけられた。

「うん。その日その日のこと、話せるといいね」

「話せるさ。...これからは一緒の時間も増える」

でも期待してはいけない。いつも先にそう思う。状況は変わるもの。こう考えてしまうと夢がないかも知れないけれど、過度の期待は持たないでいようと思う。諦めていた方がいい。その方が傷つかないで済む。それに期待していなければ、思いがけない喜びにもなる。

胸の上で重ねていた手を取られ、甲に指先に口づけられた。
優朔...。このスマートさは罪。甘い気持ちに自然と誘われていく。沢山触れてほしいって。

いつまでもお姫様のように接してくれる。さっきも確かに聞こえた。運ばれる時、お姫様って。ロイヤルでもないのに...三十路のお姫様だけどね。


「佳織。寝込みを襲いたくなかったんだよな。
まあ...意識のない佳織を徐々に徐々に襲っていくってのも、悪くないとは思ったけど」

「...」

「抱きしめさせてくれ。実感したい。佳織といるんだって、確信したい」

「…幻かもよ?これは優朔の夢の中かも知れないわよ?」

「だ、か、ら、確認。はぁ、佳織だ。間違いない。この感触…この香り、間違いなく佳織だ」

あ、私も。優朔が帰って来た時、香りを感じて解った。今も優朔の香り...。
匂いフェチなのかな、二人揃って。
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