奪うなら心を全部受け止めて
・千景18歳
「佳織、映画行かないか?」
「え、...でも」
「今度は寝ないから、な?」
「でも...」
正直な気持ち。観ている時に寝てしまう事は気にしない。ただ、映画と言うと思い出してしまう。...同じ事がまた起こる訳じゃないけど、もし、また...あんな事あったらどうしよう。
ありもしない内から心配するなんて...どうかしてる。自意識過剰よね。
それに、あれは寝ぼけたって言ってたし。
「今度はさ、ラブストーリー、観よう」
「ぇえ?」
「そんなに驚かなくても...寝ないし。起きてちゃんと観るし。俺の為にアニメを観てくれたのに、静かに爆睡し通したから。そのお詫びも含めて、どう?」
夏休みも、もう終わる。
海に行ってから、デートはもうないものだと思っていた。
あの日の、あまりに濃いカムフラージュの恋人の行為...。
ドキドキし過ぎて、だけど不思議と気まずい事は何故かない。何故したのか、いつも後で誤解を解いてくれるから。ん?あれ?海の時どうだったかな?...いつもと同じよね。自然に...変わらず手を繋ぐから。
「俺達は夏休み終わるから。先輩は休みあるよな?9月とかも会えるよな?」
「うん。休みだからって会うかどうかは解らないけど」
「そうか。どうする?映画、行く?行かない?」
「う〜ん...」
「迷ってる?...気が勧まないなら止めとくか」
「行く。...行きます」
「そう?いいのか?じゃあ、先輩に断っといてくれよ?無断でデートするとヤキモチ妬かれるからな」