奪うなら心を全部受け止めて

前と同じように待ち合わせをした。
時間に遅れてはいない。
佳織はもう既に待っていた。

男が...居る。何だ?何を話している...。
走った。慌てて走って男の腕を掴んだ。

「...離れろ」

思った以上に低い声になった。

「は?俺、俺。俺だよ。...恐」

な、はぁ...安堵した。

「ショウ...。後ろ姿で解んなかった。なんだ、驚かすなよ。悪い...はぁ、…本当に...驚かすなよ」

「悪い悪い。こっち向いて二人で手を振りながら話してたら良かったな」

「そこまでしなくてもいいけど。で?なんで居る?」

「なんでって...。おいおい。ここもどこも公共の場だろ?どこに俺が居てもいいんじゃないの?」

「そんな事じゃなくてだな...」

「ああ、たまたまだ。ただの偶然だ。それより今から映画だって?」

「...ああ」

本当に偶然か?疑わしいもんだ。

「俺も観る」

「は、はぁ?」

「…まあまあ、落ち着け。確かにお前らはデートだけど、所詮仮そめのカップルだろ?別に俺が居ても邪魔にもならないじゃん。だろ?」

「そうだけど」

「何?俺が居たら邪魔か?ん?千」

馬鹿、ショウ。

「佳織がいいなら、いいさ」

「私はショウさん楽しいから平気。あ、大丈夫です」

「決まり。で、何、観るの?」

「...ラブストーリー」

「ラ、ラブストーリー?千が?」

「...」

「まあ行こうぜ。千、両手に花だな?俺も久し振りに千とデートで、映画なんて嬉しいなぁ」

「...」

「本当に。いつも、いつもじゃないけど、私が千景さんと居るからごめんなさい」

「いや、それはそれ、だから。な」

佳織と手を繋いで歩こうとしたら、ショウが腕を絡ませてきた。
何だこれ?なんだ、コイツ、俺らはどんな関係性なんだ。

「ショウ。...流石に腕を絡めるのは止めろ。暑苦しいし。...花でもないし」

「暑苦しくなかったらいいのか?じゃあ俺も手を繋ぐか?」

「...」

「おお、これこれ〜。久々に連続技で黙らせてやった。相変わらず俺の得意技」

「離せよ。その気はない」

「え〜、千...」

「...。え〜、ってなぁ。言ってるだろ?花でもないしって」

「クスクス。楽しい。いつもこんな感じですよね?」

「ああ。俺と千の仲だからな」

「...。だから、どんな仲だ。...」

「いや〜ん。それは、あんな事...」

「言わせないぞ...」

「クスクスッ。面白過ぎます、最高です」

最低だな…。
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