奪うなら心を全部受け止めて
最初はちょっと、意地悪のつもりで寝たふりをしてみた。だって、気にしない、大丈夫ってあの日は言ったけど、隣で寝られるとつまんなかったし。
だから、ちょっとだけ、どんな気持ちになるか、解って欲しかった。
だけど、本気で寝ちゃった。室温が丁度よくて、くっついてる体温がいい感じに温かくて。
いつの間にか、頭、千景さんに乗せてしまってたし。
それに、何より、ショウさんが一緒になったから、千景さん一人ぼっちにならなかったし。逆に楽しかったかも知れない。
結局、前の千景さんと同じになった。
エンドロールで起こされるまで寝てしまってた。折角のラブストーリー、観られなかった。
同じじゃなかったのは、私は普通に起きた事。
軽く肩を叩かれ、目が覚めた。寝ぼけていなかった。頭がぐらつく事もなかった。
だから、顔を包まれる事もなかった。だから...事故も起こらなかった。
ショウさんは、良かったよ佳織ちゃん、いい話だったと、目を赤くしていた。泣いたんだ。弱い面を垣間見てしまった気がする。普段から感情表現の豊かな人。裏表がなく、見た目通り、思った通りのいい人だ。
千景さんは...泣いたようには見えなかった。
もしかして私のせい?
もたれ掛かって寝てしまったから、集中出来なかったかもしれない。
倒れ込んだりしないか、気を配っていただろうから。冷静にさせてしまったんだ。
ごめんなさい。謝ったら、気にすんな、って言われた。
相子だって、言われた。