奪うなら心を全部受け止めて
「さあ、ぼちぼち顔作れよ?
文字通り披露宴だ。
次期社長の顔とTAKAGIと榊コーポレーションとの業務提携…。
顔を売っておきたいおやじ様達が押し寄せて来るぞ。覚悟しておけよ。
今日は顔と名前、覚えられたら御の字だ。酒も入るから踏ん張り所だな。
ま、優朔は底なしに強いから問題ないか。酔ってる事が解らないもんな。あっちにいるときだって随分鍛えられた。
明日は休みだ、精々頑張れ。
今夜はここの最上階にお泊りだぞ、新郎様。
部屋は嫌という程広いから酔い潰れた振りをして寝てしまえ。俺が抱えて部屋に運んでやるから。
今夜は役者だな。上手く立ち回れよ?」
「考えたら難しい。出来れば本当に酔い潰れたいくらいだ。
能に任せるよ。
適当に引き上げさせてくれ」
「解ってる。心得ているから安心しろ。
少なくとも同じベッドに寝かせるような事はしないから」
「ああ、何もしないのに一緒に寝る事はしない方がいい」
「やっぱり、決まり通りにずっと通すのか?」
「ああ、...しない。ずっと関係は持たない」
「そうか。佳織ちゃんはこの事、知ってるのか?」
「知らない。言ってない。何一つ、俺の結婚に関する取り決めは、何も伝えてない」
「そうか。でも、結婚したら当然、するもんだと思ってるんじゃないか?そう思ってると思うぞ?
この事だけでも言ってあげた方が苦しまなくて済む部分もあると思うが。口外はしては駄目か...」
「いずれ何かの形で解る事もあるだろうが」
「何だか苦しみをしょい込んでる気になるよな。お前とする時にさ...過ぎらないとは言いきれないだろ?
夫婦という立場を想像するだろ、夫の義務としてする事を。そんな事思いながらなんて...」
「誰にも話せない事は佳織にも話せない...言いたいと俺が一番思っている。
心の負担を少しでも減らしてやりたい、そう思っているよ...」
「だけど、口外しない事も取り決めだからな...」
「...ああ、まあな」
そこは臨機応変でいいんじゃないのか。