奪うなら心を全部受け止めて

・お迎えに上がります

・佳織20歳

RRRR…。知らない番号…誰?

「は、い…」

「谷口佳織様でしょうか?」

「…は、い…」

「突然のお電話、失礼致します。私、株式会社TAKAGIの社長秘書で、松下と申します。
不躾に大変失礼なのですが、明日はお休みで間違いございませんか?」

「え、はい…あの…でも一体…なんですか」

いきなり、秘書の方がなに?

「社長の高木がお会いしたいと申しております。お時間の都合をつけて頂きたいのですが、明日のご予定は?」

「…特に…何もありません」

社長?

「有難うございます。では、こちらで勝手に決めさせて頂いて申し訳ございませんが、明日…正午、ご自宅にお迎えにあがります」

「え?あの、一体…どういった…」

用件でしょう…。

「私がお迎えにあがります。ご心配されなくても大丈夫です。社長と話をするだけですから。
よろしいですね?」

「……。はい、あ、いえ、あの」

「では明日。時間通りにお迎えにあがります。
失礼致します」

「え…は、はい」

あ…。切れちゃった…。

何…いきなり架けて来て、一方的な話。柔らかい口調ではあった。でも有無は言わせない…そんな感じ。…はい、って、返事しちゃったし…。

社長って事は優朔のお父さん?お祖父さん?
…多分お父さんの事よね。
優朔…。この事は優朔は何も知らないって事よね。知ってたら先に言ってきてくるるはずだから。
知らせた方がいいのかな…。でも、私に直接連絡してきたんだから…。
…大丈夫。うん…大丈夫。何とかなる。
話をするだけって言ってたし。


待ってるって…部屋で待ってるのは何だか生意気な気がして、アパートの前で待つ事にした。

あー、…緊張する。

12時5分前。

重厚な黒い車が近付いて来た。
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