奪うなら心を全部受け止めて
二人共、まだ若い。
俺だって、然ほど変わらず若いんだけど…。
留学か…。
二年や三年では帰らないだろうな。四、五年…。そのまま、あっちの支社に勤務する事になるんじゃないかな…。
そして、帰って来る時は、…恐らく結婚披露の為になるだろう。道は決められてる。
佳織ちゃんはつき合い始めた時、知らなかったんだな、優朔の家の事情。
多分、普通に好きになって、普通に恋愛して、その先に当たり前のように普通の結婚があると思っていたんだ。
結婚はまだ思わないにしても…まあ、それが、極普通の事だから。
変わった環境に居る人だなんて、取り上げて特に考えないよな…。恋する事に必要ないし。優朔も、何とか出来ると思ってたんだろ、その考え、甘いけどな。
優朔が御曹司だと解っていて…つき合っただろうか。
否、恋愛は出来る。
だから、恋愛で終わらせる事も出来た。いや、どうなんだ。なんか、期限のあるような、そんな恋愛、好んでするか?どうなんだ。税所から解っていたら諦めるというか、つき合ったりしないんじゃないのか…。ふぅ、人によって色んな考え方をするから解らんな。
だけど、優朔は…高校生の時に佳織ちゃんとの先を考えていると宣言していた。…自分の道は決められているのにだ。
だとしたら、…受け入れていたのか…、佳織ちゃんを愛人にという事。
心は既に決めていたという事か…。
結婚する事イコール愛人になる事…。それでは、知らない佳織ちゃんが酷じゃないか…。
はぁ、こんな話…。せめて…二十代後半、三十代からの恋愛からなら、聞かされても割り切れた話かも知れない。…好きで他に道がないならと。
でも…、二十歳そこそこで…まだ関係も持っていない、純粋培養な恋愛の最中に…傷ついた気持ちで、変わらずいられるものだろうか…。
優朔は結婚するんだ。信じる事に不安は生まれないだろうか。
俺がいくらどんなに思案しても、なんにもならない…。
佳織ちゃんが決める事であり、優朔が決める事だ。