奪うなら心を全部受け止めて
「果林、お前は佳織ちゃんのとこに戻ってやれ。俺が仲城さん達追い掛けるから」
「解った。直人、絶対追いついてよ」
「任せとけ。って、ぇええ?…奇跡だ…。
果林、仲城さん達がこっちに来てる。しかもスゲー走ってる」
「えっ、本当だ」
「はぁ、はぁ、どうした?」
「あ、仲城さん。佳織が…トイレで…水かけられて。いつも行かない、3年生の教室に近いところ使ったら…、手洗いのところで、二人に囲まれて…。
それで、ジャーッて…勢いよく水を飛ばされて…上半身が濡れて終って。…それで、今は直人の上着、着せてます。
…誰も何にも言わないからっていい気にならないでって、その二人が。…人の気持ちを考えられないの?って…。
1年ではないです。2年生か3年生かは…解りません。そこまで見れなくて」
「ん、解った。大丈夫だから。果林ちゃんと直人君は佳織ちゃんのとこに行ってて、頼むよ」
「はい」
「…酷い事するよな。なあ、千。確か今日は高木先輩休みだったよな」
「…ああ」
「…居ないのをいい事に…チャンスとでも思ったのかな…」
「さぁな。でも、果林ちゃんの話だと、多分3年だろうな。…自称、岸谷さんの親友とでも言ったところだな。多分、勝手にやったんだろう。友達思いのつもりで」
「あー、だな。で、どうする?」
「ん?」
「犯人探し、するか?」
「否、…無理だろ。現行犯じゃない限り、…聞くのも難しい」
「だよな…。事後じゃ…。問い詰められないし、下手すると逆恨みでまたやるかも知れない」
「ああ…。これじゃ、護るって言えないよな」
「…ああ」