すきだから
「ありがと、千歳」

「へ?」



帰り道。

私が唐突にそんな風に言ったもんだから、千歳は食べていた肉まんを口にくわえたままでそう答える。

何に対してのありがとうなのか、分かっていなかったらしい。

「テストよ、テスト。千歳のお陰でめちゃくちゃいい点数取れたの。ありがとね、教えてくれて」

「マジか。やったじゃん!まあ俺の教え方もいいかもしんないけど、何より香苗の理解力があったからじゃない?おめでとう」

「いやいや、千歳のお陰だよ。千歳いなかったらあんな点数取れなかったもん」

「これで心置きなく冬休みを迎えられるな」

「そうだね!追試の心配をしなくていいなんて、ホント幸せ!」

それを聞いた千歳は満面の笑みで私を見る。
その笑顔につられて私も千歳に笑みを返した。

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