キミへ
だからこうして外に出向いているのだ。



夏とかなくなればいいのに…。



文句を心の中で唱えながら足を
適当に進めた。



駅に近づけば近づくほどどんどん
気温が上がって行くようだった。



夏の日中はかなり人が多い。



俺はだるくなって仕方なく地下鉄を
使って都心に出ることにした。



階段を降りていくとそこは砂漠に
湧き出たオアシスのようだった。



人が多いといえど、快適な温度に
設定されたこの場所は天国だった。



「あれ?はるとくん…だっけ?」



俺が地下鉄の改札でカードを当てた瞬間、
裏からおっとりとした声が聞こえた。



改札を通り抜けて後ろを振り返ると
かつて俺が人間違いをした少女。



なつきがいた。



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