ロールキャベツは好きですか?
『双山ね、飲み会のない日なのにあまりにベロンベロンになって帰ってくるから……気になって、こっそり鞄開けたの』
「……で。見つけたんだ」
『そう……。予想外の人の辞表だからびっくりして……でも、悪いよね。どんな事情があれ、勝手に聞き出そうとするなんて』
反省して段々声が小さくなる向井に、俺は首を横に振った。
「いや……教えてくれてサンキュー。恋人なのに、彼女の退職を掲示板で見るとか悲しすぎるだろ」
今自ら言わないというなら、退職まで言わないつもりだったんだろう。
向こうが言わないなら、こっちから聞き出すのみ。
「俺今から祈梨さんの家行って話聞いてみるよ」
『え、今からって……もう夜の9時……』
「大丈夫。祈梨さん家は徒歩5分だから」
『え?近っ!』
「だろ?」
こんなとき、家が近くてよかったと思える。
思い立ったらすぐに会いにいけるから。
電話じゃダメだ。
顔を見なくちゃ、電話口で淡々と嘘をつかれたら見破れない。
「行ってくる。あと、お前ならそんなことしないと思うけど、俺らが付き合ってる話は内密に頼むよ」
『了解』
電話を切ると同時に俺は、ハンガーにかかっていた、ダウンジャケットを羽織った。
スマホと家の鍵を持ち、ガスの元栓が締まっていることを確認してから、家を飛び出した。