ロールキャベツは好きですか?

「お二人さん。また来てな~」

人懐っこい笑顔を浮かべたご主人に見送られて、私と田島くんは店を出た。

私のアパートの方へと歩みを進めながら、田島くんは満足そうに、口を開いた。

「美味しかったです。主任。俺も通おうかな、ここ」

店を振り返った田島くんに私は嬉しくなる。

「でしょ?気に入ってもらえて、何より」

「また残業重なったら、一緒に行きませんか?主任。今度は俺に奢らせてください」

左を見ると、真剣な瞳にぶつかった。

誘ったのは俺です、と食い下がる田島くんをねじ伏せて、代金を払ったのは、私だった。

そのことをどうやら、田島くんは気にしているようだ。

「気にしなくていいのよ。田島くん。上司が部下に奢ってもらうなんて、メンツが立たないわ」

「女性に支払ってもらうなんて、男としてのメンツが立ちません。だから、また、誘わせてください」

そのまま立ち止まってお願いします!と頭を下げかねない勢いだったので、私は慌てていった。

「わかった。また行こう。今度はゴチになります」

「本当ですか!?」

「ええ」

「よっしゃー!」

立ち止まって、いきなりガッツポーズをした田島くんに目を瞬く。

「た、田島くん?」

「あ、すみません」

一気に平然と歩きだした田島くんに、訳がわからないまま、慌ててついていった。

「……ホントのことを言うと、奢りたいというのは口実で、また主任のことを誘いたかっただけなんです」

ネタバレです、みたいな口調で言ってくれるけど、私には何が何やらわからない。

「田島くんって不思議ね。普通、上司との食事なんてみんな、嫌がるんだけど……」

首を傾げた私に、田島くんが苦笑したのが、外灯に照らさてた横顔からわかった。

「鈍いですね。主任って意外と」

「はい?鈍い?」

「好意持ってない上司のことを、誰が家まで送りますか」

まだ目をぱちくりさせている私を見て、やれやれといった風に、田島くんが吐息した。
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