素直になれない7センチ




「 “新藤” さん」

「は、はい……」


ゆっくりと顔を上げると、社内でよく見る爽やか笑顔の夏目くんが立っていた。



「これ、社内アンケートらしいです」

「……了解です」

「記入したら向こうの机の上に置いてある箱の中に裏返して入れておいてください」

「……はい」



こんな風にオフィスで周りに人がいる中で会話をするのは初めてだったから、変に緊張してしまう。

落ち着け。落ち着くんだ私。



「よろしくお願いします」

渡されたアンケート用紙の上にころんっと転がる一口サイズのチョコレート。



「え……」

「甘いものとってリフレッシュしてくださいね」


少しだけ身を屈めて私の耳元で囁くと、何事もなかったかのように夏目くんはアンケート用紙を隣の席の真希に配る。


……こんなのずるい。


白いアンケート用紙の上の懐かしい包み紙を眺める。

スーパー等でクッキーやチョコレートとセット売りされていて、家庭教師をやっているときにおやつとして食べていた。



私がその中でも一口サイズのオレンジ風味のチョコレートが大好きだった。







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