素直になれない7センチ
「ご飯、行こうよ。香穂さん」
「……な、なんで」
「なんでって俺が行きたいって思ったから。……いや?」
「う……っ、か、からかうのやめて」
腰を屈めて私の顔を覗き込みながら上目遣いをされて、咄嗟に視線を逸らす。
可愛らしく聞いてこられると断りにくい。どういうつもりで夏目くんはご飯に誘ってくれているんだろう。
「からかってないよ。酷いな」
「……っ」
“酷い”って言葉が心を抉るように刺さってきた。
その言葉で連想するのは夏目くんを突き飛ばして逃げてしまったあの日のこと。
「ご飯、行ってくれる?」
「……は、八時までに仕事が終われば」
「ん。待ってる」
嬉しそうに微笑む夏目くんに鼓動が速くなっていくのがわかる。
なにしてんだろ……私。期待持たせるようなこと言っちゃって。
そもそも夏目くんは私のこと、どう思っているんだろう。