素直になれない7センチ
「おはようございます。本日よりシステム管理部に配属になりました夏目誠(なつめ まこと)です」
見るからに下ろし立てなスーツにピカピカの革靴はまだ慣れていない初々しさを感じる。
そして、清潔感のある黒髪にたれ目な目元には泣きぼくろ。綺麗な顔立ちは相変わらずで、年上の女性が多いこのフロアでは好かれそうな好青年オーラ全開。
「今年入社したばかりで、半年間は店舗で研修をしていました。初めての本社勤務でみなさんに色々とご迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします」
彼の挨拶が終わると拍手が起こる。
このフロアには部署が六つくらいあるから結構な人数分の拍手の音が響いていた。
そして、にっこりと微笑む彼に女性社員の何名かが頬を桃色に染めているのがわかった。
そっか……もう社会人になったんだ。時の流れをひしひしと感じる。
出会った頃、中学生になりたてだった彼は今は社会人になりたて。
……彼は私のことなんてきっと覚えていないんだろうな。
だってあれは、もう……何年も前のこと。
たとえ覚えていてくれても、嫌われているはず。私は夏目くんに酷いことをして去っていったんだから。