セカンドパートナー
「もう怒ってないって。秋月さんのことは言ってみただけ」
穏やかな自分を演じた。
「優人が浮気なんてするわけない。信じてるからそういう冗談も言えるんだよ」
「もう! そんなこと言われたら困るって〜、マジで」
あからさまに安堵する優人を見て、また、イラっとする。でも、何も言わずベッドに入った。もう、ゴチャゴチャめんどくさい言い合いになるのはカンベン。
数日後。
ピアノ講師の仕事を終えた羽留と、約束のカフェで落ち合った。結婚後、この時間にどれだけ救われていただろう。
「感情的にならずに言葉でちゃんと説明したこともあるんだよ。怒りたいの我慢してさ。なのに、優人は私の考え方を理解してくれない。私のこと、口うるさいし文句ばっかり言う女って思ってそう。実際そうなんだけど、好きでそうしてるわけじゃないのに……。ホント嫌」
優人に対する不満を話すと、羽留も同意をを示して激しくうなずいた。羽留も、旦那さんに対して私と同じような不満を持っている。
「優人君、優しいしいい人だけど、詩織がそう思うのも当たり前だよ。もっと分かってほしいよね。冷静に説明した詩織は偉いと思うよ。あたしだったら感情的になってバーッと言っちゃう」
羽留の旦那さんは、私達より十歳年上の営業マンだ。短大卒業後、羽留が最初に勤めた楽器店で、そこの先輩に紹介されて知り合ったそう。
羽留の自宅に遊びに行く時などに、旦那さんには何度か会った。ご飯や飲みに連れて行ってもらったこともある。色んな要素が、年上らしくて立派な人だと思った。考え方も落ち着いていて、頼りになる冷静な話し方。
羽留が安心して甘えられるのも分かる気がした。