セカンドパートナー
安定した暮らしの中にいて、命の危機も感じず幸せなはずなのに、同じくらい不満も感じてしまう。努力していても、そう。
優人とは、根本的に相性が合わないのかも。だったら仕方ない。これ以上の理解を求めるのは労力の無駄。心の片隅でいつもそう思っている。
不満の吐き出し合いで淀(よど)んだ空気を変えるべく、明るく言った。
「男と女は脳の造りからして違うって言うし、仕方ないって割り切るしかないのかー……」
「ま、なんだかんだで旦那って一緒にいて一番楽な相手でもあるしね。甘えが出てるのかも」
「だね。感謝の気持ち、忘れないようにしないとね」
優人への気持ちを見失ってしまわないよう、改めてそうつぶやく。
ためらうように間を置き、羽留が言った。
「でも、並河君は違ったね」
「え……!?」
突然出たその名前に、頬が瞬時に赤くなる。不満に満ちて尖っていた気持ちがふわっと丸くなった。
私の反応に柔らかい笑みを見せ、羽留は懐かしげに目を細める。
「女性的感性を持つ男性っていうのかな。並河君って男らしい頼もしさもあったけど、詩織の気持ちに気付いて優しく寄り添うような存在だったよね」
「……うん」
「短大にもいたよ、そういう男の子。音楽やってたからってわけじゃないだろうけど、並河君もそういうタイプだったね。特に、詩織に関してはアンテナが敏感に反応してるみたいだった」
「また羽留は、そんなことを」
興味の深い話題なのに、やっぱりはぐらかしてしまう。