セカンドパートナー

 もしかして、朝練ならぬ朝アトリエ? 皆より早く登校して絵を描いているのかもしれない。

 そうでなくても、気軽に訪ねていく気にはなれなかった。

 普通科と美術科・音楽科の間には、見えない壁がある。芸術家肌な美術科・音楽科の子の中には、普通科の私達を平凡だと言って見下す人がいる。それは偏見だ。普通科にも何かに秀でている人はたくさんいる。

 でも、本当に特技がない私などは言い返す気にもなれないし、先日並河君の悪口を言っていたのも、そういう事情を知る普通科の男子達。

 悲しいけど、こういう格差みたいなものが、高校生の間にも確実に存在している。

 実際、並河君はすごい才能の持ち主。格差説(?)をうのみにしたわけじゃないけど、私なんかが顔を見るためだけに気楽な気持ちで美術科を訪ねるなんて、許されないことのような気がした。

 今まで並河君と会えてたのも偶然。そんな偶然は、そう何度も都合よく訪れたりしない。

 番号交換を断ったのは正しかったとでもいうような現実に、羽留との電話で浮上した気持ちは一気に沈んだ。

「天使(てんし)ちゃん、おはよう!」
「……?」

 誰?

 突然、違うクラスの知らない男子にあだ名を呼ばれた。

「ごめん、いきなりでビックリしたよね。昨日、ベルなかったから気になって……」
「ああ…! メモの人?」
「そうそう! 菱田。菱田亮介(ひした・りょうすけ)です。C組の」

 菱田君。そっか。この人が、昨日にぎやかな女の子達にベル番を託した男子か。誠実そうで笑う顔があどけない。少年って感じがする。

「入学式で初めて見た時から、ずっと仲良くなりたいなって思ってて……。天使ちゃんって、あだ名も可愛いよね」
「そう……? 自分ではよく分からない」

 どうしよう。いつまでしゃべり続ける気だろう、菱田君。見た目は恋に興味がなさそうな子供って感じなのに、中身は女好きな軽い人?

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