セカンドパートナー

 気まずいのに、沈黙がどこか心地いい。

 変な感覚を引きずったまま私達の間に会話はなく、誰もいない静かな渡り廊下をただ歩いた。ここを渡れば美術科の校舎に入る。


 そこから先は知らない世界だった。

 廊下や各教室の造りは普通科や音楽科と同じなのに、雰囲気が違う。美術科の校舎に入った瞬間、絵の具の匂いに包まれた。

 渡り廊下と校舎の間に立つ扉を閉めると、並河君は閉まっている廊下の窓枠にもたれた。

「好きな人いるって、勝手に話作ってごめんな。ああでも言わないと、男って分からないから」
「ううん、いいよ。菱田君とはクラスも違うからもう会うこともないだろうし」

 この学校は1年から3年までクラス替えはない。

 美術科の校舎から見る外の景色は、いつも自分の教室から見るものとはだいぶ違って見えた。中庭に立つ淋しげな枯れ木ですら、並河君なら立派な絵画にしてしまうんだろうな。

「ホントのとこどうなの?」
「何が…?」
「詩織、好きな人いる?」

 尋ねてくる並河君の目はまっすぐで綺麗だった。頼もしくて優しい色。だけど、いつもとは少し違う、野性っぽさもにじんでいた。

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