知らない貴方と、蜜月旅行
「あのさ…」
「んー?」


ボウルに卵を割り、上機嫌で作り始めていると、吏仁が後ろから声をかけてきて、私は油を引きながら返事をした。


「怒ってねぇのかよ」
「怒る…?あぁ…昨日のこと、ね」


吏仁、気にして声をかけてくれたんだ。昨日のこと、悪いと思ってるんだね。


「怒ってないよ。私こそ、ごめんね?」
「は…?なんで、お前が謝るんだよ」
「よし、できた。今日は、これだけしかないけど許してね」


話の途中で卵焼きを皿に移し、テーブルに置いた。飲み物も、ミネラルウォーターしかなく、仕方なく水を注ぎ卵焼きの隣に出した。


「私、泣いたでしょ。私たち、夫婦なのに。ああいうことは、夫婦として普通のことなのに、私拒否しちゃったから…」
「………」
「だから、ごめんね?次は、大丈夫だから」


そう言うと、吏仁は飲もうとしていた水を、テーブルに置いた。


「そういうこと、言うなよ…」
「え?」
「次は大丈夫、とか言うなって。嫌々ヤるくらいなら、もう手は出さねぇよ」
「………」


それだけ言うと、吏仁は私の作った卵焼きを一口食べて「美味いよ。俺好みの味」と言って、あっという間に食べきってしまった。


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