たった一つの隠し事
「……了解だ、鈴原。俺も好きだった。ずっと」
私の一世一代の我が儘を、甘やかな声が承諾してくれるのが聞こえる。
次の瞬間には、互いの唇が重なった。
私の手の中に握られたままの彼は、どんな顔をして見守ってくれているのだろう。
私はこの手の中の彼に私の全てを、顧客リストも営業戦略も、時にはプレゼンの資料や企画書の下書きまで、大事な全てを彼に託していた。
彼が居なくなったら、私はこの職場で忽ち立ちいかなくなる。
それほどまでに依存していた彼に、たった一つ隠していた事。
これだけは誰にも託す訳にはいかない、私の恋心。
あなたが言っていたのは、この事だったのね。
もっと早く素直になれば良かった。
有難う、小さなあなた。
そしてこれからもどうか、大事な事をつい忘れそうになる私の事を助けてね。
触れ合うキスの甘さをうっとりと味わいながら、私は大事なUSBメモリを握り締めたのだった───
【end】
擬人化:USBメモリ
