たった一つの隠し事

私の項にその整った面差しを埋めるようにしていて、だから近過ぎて彼の表情は見えないけれど。
触れ合う頬があんまり温かくて、彼への想いが胸に溢れてくる。


「もう一人で泣くなよ、鈴原。何かあったら、俺に相談しろ」

「うん…」

「それから、本当に御免。迷惑かけた」


彼が心から謝ってくれているのは、その優しい語調で分かる。

今なら、少し我が儘を言っても許されるだろうか。

ふとそんな風に魔が差した私は。


「本当に私に悪いと思ってるなら。一つ、私の言う事を聞いて」

「うん?」

「今からすごい我が儘を言うから、それを叶えて」

「……、───分かった」


彼は怪訝そうに一度言葉を止めたものの。
多くを問わず、ただ私を抱いてくれている。

私は彼のスーツの広い背に腕を回して、彼を抱き締め返した。
耳元で、彼が驚いたように小さく息を呑むのが分かる。

でも言わなくちゃ。きっと今なら言える。だから、


「私のものになって。───雨宮くんが好き。ずっと好きだった」


私が心の奥底に秘めていた、その本心を。
誰にも言わずに隠しておくつもりだった、本当の気持ちを。
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