たった一つの隠し事
ばたん、と扉が乱暴に開くと、息を切らせてそこに立っていたのは、同期で同僚の雨宮悟(あまみやさとる)だ。
きっと180は超えているだろう均整の取れたその長身の姿を見付けて、私は驚いて眸を瞠った。
彼は今日の午後、得意先を回ってそのまま直帰すると聞いていたからだ。
雨宮くんは長いコンパスで早足にデスクの島を回り込み、私の傍に近付いてくる。
「鈴原、やっぱりまだ残ってたか」
「雨宮くん。何で? 今日はもう会社には帰らないって」
「そのつもりだったけどな。お前、絶対に困ってるだろうと思って」
「私が? どうしてそれを」
「分かるよ、お前の事なら。誰にも相談しようとせずに、自分で解決しようと強がって無理する事も」
「それは…!」
かっと頬に血を上らせ、私は言葉を詰まらせてしまった。
お互いに入社三年目。
雨宮くんはこの営業部に一緒に配属された同期だ。