たった一つの隠し事

端正な長躯に加え、甘やかに整った顔立ち。
何気なく零される笑み一つで、大抵の女子はうっとりと彼に絆されてしまう。
営業成績は常にトップで、営業部の次期エースと囁かれている。

そんな彼に、私が密かに寄せている想いなんて、告げられるはずもなくて。

却ってつい意地を張って、いつも可愛げのない態度を取ってしまう。
今だって、条件反射で。


「私が困ってたって、雨宮くんには関係ない」

「またそんな事を言う。関係なくなんかねーよ」

「それは同期だから? 皆にモテモテで営業部の次期エースの雨宮様の気紛れなお慈悲ってこと?」

「何だよ、その言い方」

「とにかく私の事は放っておいて。雨宮くんに心配されるような事なんか何もない!」

「嘘吐け。今だって泣きそうな顔してるじゃねーか」

「泣かない! 泣いてない…!」


強情に首を横に振る私をふわりと包んだのは、雨宮くんの温もりだ。
まだ床に座り込んだままの私を、ぎゅっと抱きしめてくれる逞しい腕。
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop