たった一つの隠し事
「放っとけねーよ。俺は知ってる。お前が何で困ってるのか」
「雨宮くん……」
「だから戻ってきた。つか、悪ぃ。俺、お前に謝んなきゃなんねえ」
「どうして雨宮くんが私に?」
「これ」
彼が少しだけきまり悪そうに、スーツの上着のポケットから小さなものを取り出す。
「あ…!」
「悪ぃ。今日、出がけに急いでてな、資料やら何やらと一緒に、間違えて俺が持って行っちまってた。お前、これを探してたんだろ」
「……」
「ほんとに御免。お前がどんなに困ってるかと思って、出先でも気が気じゃなかった」
「……」
「携帯に幾ら連絡しても、お前、出やがらねぇし」
「……」
「戻ってみれば案の定、お前、たった一人で泣いてやがるだろ。…ったく、お前にそんな顔させるなんて」
そうだ、午後一杯、私は探し物に夢中で、携帯なんかチェックしてる余裕が無かった。
私は、彼の手から私の掌に移されたそれを、咄嗟に握り締めた。
本当に申し訳なさそうに、雨宮くんは私を抱く腕に力を籠める。