金曜日の恋奏曲(ラプソディ)


私は更にスピードアップした。




何かを振り切るように。




がむしゃらに手足を動かして、前だけを見た。




須藤くんとそれなりの距離はあるけれど、油断したらすぐに追いつかれてしまいそうだ。




もう目の前が白く弾けていって、朦朧としていた。




汗が止まらない。




こんなに走ったのはいつぶりだろうか。




必死だった。




だから、気付かなかったのかもしれない。




とりあえず見失ってもらうために、一直線ではなくひたすら曲がることにした。




一階の端の美術室の方へ。




左に曲がって右に曲がってもう一度右に曲がって…。







愕然とした。





「……そんなっ……!」




目の前にあるのは緑色の非常用出口。




非常時にだけ開くようになっている金属製の重いドアだ。






つまり平常時の今、ここは、行き止まり……。






……バタバタバタッ





「…………!」






後ろを振り向いた。




足音が近づいてきている。




ここまでくるのも時間の問題だ。




私はどこか、隠れられるところがないかと、あたりを見回した。




しかし生憎、ここは非常時の混雑を予想して人はけが良いように、物が置かれないようになっている。






だから、何もない。






……どうしよう!




「……せがわさんっ……!」




須藤くんの姿が見えた。




焦って私はドアに駆け寄った。




ドアノブに手をかけて引いてみる。




…だよね開かないよねどうし










息を呑んだ。









焦った思考の中で浮かんだ言葉は三つ。









"開いてる"






"珍しい"






"否、奇跡"








一瞬、迷った。









ここから出たら多分逃げられる追いつかれることは無いでも本当にいいのかなバレたら怒られるかないやそうじゃなくてあんなにも必死な須藤くんの言うこと聞かなくていいのけど捕まったら











そして














私は、引いた。
















キィ

























ーーーーーーーーーーダンッッッッッ!!!!













体を芯から震わすような音がなった。





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