金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
今までの事と、りっちゃんに思ってたこと、全部話した後私は、ごめん、ごめんね、ってひたすら繰り返していた。
安い言葉だと分かっていても、言わずにはいられなかった。
自分が情けなくて、りっちゃんの顔が見られない。
しつこいくらいに謝罪の言葉を並べ立てていたら、りっちゃんがいきなり、バッと立ち上がった。
私はビックリしてりっちゃんを見た。
でも、階段横の窓から差し込む光のせいで、りっちゃんがどんな表情をしているのかよく見えない。
りっちゃんが、ずかずかと私の前に来た。
「...........バカッッッ!!!!」
.............りっちゃんの怒号に、お尻が5センチ程飛び上がったかと思った。
耳の奥が、キーンと鳴っている。
吹抜けの階段に、声が反響して何度も私に襲ってくる。
.......ばかっ.......
.....ばかっ.....
...ばかっ...
...かっ.....
やっと、私の思考が追いついてきた。
...りっちゃんが
私に、初めて、怒鳴った。
「.......お、怒って...る?」
恐る恐る聞くと
「当たり前だよッ!!」
とりっちゃんが噛み付くように言う。
りっちゃんは、キッと私を見た。
「あのねぇっ、琴子はウジウジ考え過ぎなんだよ!!もう!ウジウジ琴子!!考えて考えて、考え込んで、自分を責めて。めんどくさいんだよ!!!」
今まで聞いたこともないようなりっちゃんの荒い声と言葉遣いに、私は目が点になった。
驚きのあまり、さっき滲みかけていた涙も、凄い勢いで引っ込む。
でも、りっちゃんはそんな私など全然お構い無しの様子で話し続けた。
「結局琴子は甘えてるんだよ!!
こんなこと言いたくないけど、今回だって絶対私なら慰めてくれるって思ってたんだよ!だから私、慰めてなんかあげないよ!」
りっちゃんの言葉達は、容赦なく私の心を刺していく。
でも、私は、何も言い返すことが出来なかった。
…全て、正しすぎて。
気付いた時には、全然悲しくないのに、悔しいわけでもないのに、そんな権利自体無いのに、まるで抑えが効かなくなった涙が瞼のフチを乗り越えようとしていた。
私は、強く、下唇を噛む。
りっちゃんはそんな私を見て、声のトーンを一段低くした。
「琴子、私に一言いうのがそんなに大変?そんなに辛い?...私、そんなに頼りない?」
...語尾が、震えてた。
「...りっちゃん...泣いて、る...?」
「怒ってるよ!!!」
やっぱり反射的に噛み付かれて、でも、りっちゃんの目は確実に潤んでいて。
窓から差し込むお昼の日差しが、りっちゃんの顔をくっきりと照らし出していた。
「...でもね...それより、悲しいんだよ...。」
りっちゃんの顔が、くしゃっと歪む。
「琴子、自分に自信無さすぎだよ。自分を卑下し過ぎだよ。悩んで1人で溜め込んで、私に言えないのを自分が悪いって責め立てて。バカだよ。大バカだよ。私、そんな琴子ちっとも好きじゃないよ。」
さっきと同じぐらい、もしかしたらそれよりも激しい言葉なのに、全然刺がなくて。
私の心を奥から揺さぶって、切なくさせる。
次の瞬間、りっちゃんは私を本気で驚かせるようなことを言った。