音楽プレーヤー
おじさんとおばさんは、マナに辛い記憶を思い出させないよう、
事故に合い記憶を失ったと話した。
マナに苦しかった想いを、思い出してほしくなかったから。
俺は初めて出会った生身のマナに、頑張って話しかけた。
写真ではなく、本物に出会えたことが、どうしようもなく嬉しかった。
2年生になった時、同じクラスだと知り、思わず飛び上がりそうになったほど、嬉しかった。
だけど同時に、名簿を見た時絶望した。
須王江里の名前に。
マナは忘れていたとしても、須王江里は覚えているかもしれない。
マナの記憶を封印したままにしておいてくれ、と心の底から祈った。
須王江里とマナは仲良くなった。
親友と呼べるまで発展するほど。
注意深く観察した。
だけど、エリがマナをいじめている様子はなかった。
エリは交友関係が広い。
移動教室だった休み時間、スマホを盗み見たけど、電話帳には何百人もの男女の名前が登録されていた。
瀬戸内 愛という自分がいじめた可憐な少女のことなど、覚えていないのだろう。
それで良い。
俺が覚えているから。
マナが笑えているのなら、それで良いんだ。
だけど、予想はしていた。
須王江里が、マナを嫌っているのだと。
月日が経ち、お互い忘れているとは言え。
マナも須王江里も、性格はあの頃と変わっていない。
主犯だったのだから、いじめ始めたのは須王江里。
初めに彼女がいじめを決め、周りが従っただけ。
嫌いだ、と須王江里が言った時。
やっぱり、なと思った。