ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
(二)
法衣の少年。隣町で修道士をしている彼、サクスくんはいわゆる、“見える人”だそうで。
「本当ですか!ほんとーに、彼はここにいるのですか!」
「ああ、はい。黒髪イケメンさんっすよね?いますよ。あ、そっちじゃなくて右肩あたりに。えっと、名前はクラビスさん。『フィーナの最愛にして、唯一の恋人たる男クラビスだ』と名乗ってます」
「クラビスさんだあああぁ!」
間違いない!間違いなく、クラビスさんが見えていて、つまりはここに。
「く、クラビスさん、死んでまでも、そばに、わた、私のとなり、に、ぃ」
「あ、わ、泣いちゃだめっすよ。そ、その、オレどうすればいいか。あ、あの、ハンカチ」
受け取ろうとすれば、引っ込められた。
「いやいやいや、漬け込む気ゼロっすよ!優しさっす、優しさ!え、オレの汗を拭いたハンカチ?いや、そりゃあ、ハンカチですから汗拭くもんでしょ。はあ!?体液なすりつける気って、んな変態思考する奴はこの世のどこにもいませんよ!」
あの世に行ってしまった彼は、よく間違えて私のハンカチを使っていたことを思い出す。
死んでも彼は何も変わっていないんだ。
「彼が、隣に。良かった……」
死人に天国に行かなくて良かったと、酷いことを言っている自覚はあるのに、そばにいると分かってしまえば涙が出るほど喜んでしまう。
「えっと、フィーナ、さん?クラビスさんから、そばにいるのだから、泣かないで……と」
「無茶言わないで下さい、よ……。生きていた時も隣にいるだけで泣きそうなぐらい幸せだったのに、今もまだ隣にいてくれるなんて」
見えない聞こえない、存在自体が霞であっても、そこにいるという事実でずいぶんと救われた気がした。
「そばにいてくれて、ありがとうございます。そうしてーー」
言おうとした矢先、サクスくんがダメッすと遮った。
「ありがとうだけでいいって。それ以上は、後悔してしまうからって」
ごめんなさいを言わせてくれない彼は、私のせいにしたくないのだろう。
私に甘い人だ、本当に。
「ありがとうございます。また、そばにいて下さい」
言えなかった言葉の代わりを出す。
サクスくんが微笑んで頷くあたり、彼もまた同じ反応をしてくれたのだろう。