あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「濡れますよ」


「いいよ。そのくらい。美羽ちゃんが泣きたい時に涙を拭うのは俺の役目だよ。美羽ちゃんのことだからいっぱい我慢したんだろうって分かる。でも、俺の気持ちをもっと信用して、俺は、美羽ちゃんが思っているよりもずっと美羽ちゃんが好きなんだから」


 そんな優しい言葉に私はまた涙を零すのだった。時間はゆっくりとそして確実に過ぎていく。私は小林さんの胸でこんなに泣いたのは久しぶりだと思うくらいに泣いた。ポロポロ零れる涙がシャツに次々と吸い込まれていた。


 小林さんは泣いている私を抱きしめ、ゆっくりと背中を撫でる。子どもをあやすような優しい動きに心の痛みが癒されていく。心が決まらないのは変わらないけど、私の中の迷いを吐きだしたので、気持ちが楽になったのは間違いなかった。


「美羽ちゃんに言っておく。もしも、美羽ちゃんがフランス留学に行っても行かなくても何も変わらない。俺は別れるつもりはない。今までもこれからも変わらないから」



 そんな小林さんの強い言葉に私はまた恋をする。

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