あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私は寝室に入ると、部屋着に着替えた。本当は先にシャワーを浴びたいけど、さすがにお腹が空いているのを待たせるわけにはいかない。それにお弁当は温かい方がいいに決まっている。


 急いで着替えを済ませてリビングに行くと、テレビを必死に見つめる小林さんの姿があった。画面に映るのは野球のニュースで既に結果の出ている試合のダイジェストだった。小林さんは画面から視線を外せないようで、買ってきた弁当もまだ袋の中にある。


「あの、先にシャワー浴びてもいいですか?」


「うん。でも、お腹空いてないの?」


「先にシャワーを浴びた方がゆっくりできるから」


「美羽ちゃんが好きにしていいと思うよ」


 私はシャワーを浴びながらさっきの小林さんのことを考えていた。高校まで野球をしていたのだからだと思うけど、テレビを見つめる姿は真剣そのもの。真っ直ぐな瞳が画面に注がれる。そして、それは私がシャワーを浴びてリビングに戻ってきてからもテレビに夢中だった。



「野球が好きなのですね」


 そう言って私が小林さんの横に座って、弁当を並べようとすると、そのまま手を引かれて小林さんの胸の中にバランスを崩して飛び込んでしまった。私の身体を小林さんは後ろから抱き寄せると、耳元で囁く声は熱に浮かされたようで…。


「野球好きなんだよね。もう前みたいに出来ないと分かっていても、身体が疼くほど好きなんだ。あれから何年も経っているのに、あの時、自分がこれ以上投げると肩を壊してしまうって分かっていた。でも、俺は自分で選んで投げた」



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