あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 婚約者ということで恋人よりも一段階だけ上がったけれども、私の中の気持ちはそんなに急激に成長するわけではなかった。肩に自分の頭を傾けるくらいが私の中での『甘え』であって一般的には…まだまだなのかもしれない。


「そうですね。明日はいつも通り仕事ですし」


 そう、明日から私はフランス留学に向けての準備に入る。それと同時に今の研究を一段落させたいとも思うので、忙しくなるだろう。パソコンの中のデータを全部バックアップを取って、それから…後何をしないといけないかな?


 でも、一番話さないといけないことを何も話していない。


 そんなことを考えていると、私の前に影が出来、そっと唇が重ねられた。唇に触れる温もりを感じる不意打ちのキスにドキッとして、一気に小林さんに意識が一瞬で戻ってきた。


「今更だけど、俺、美羽ちゃんのベッドに寝ていいの?」


 普通の女の子ならこういう時にどうするのだろう?言葉に困って小林さんを見上げると小林さんはニッコリと笑っていて、助け舟は出してくれない。私に言わせたいのだと思う。言葉は言わなくても分かっているはずなのに…。


「一緒がいいです」

 小林さんは意地悪だと思う。きっと、何も言わずにベッドに行けばそのまま一緒に寝たと思うのに、それなのに私に言葉を言わせる。恥ずかしくて仕方ないのに…。


 小林さんは嬉しそうで。


「俺も一緒がいい」



 そして、私はその笑顔を見ながら、フランスに行くのを後悔しそうになった。でも、まだ、小林さんに言えてない。言わないといけないのに、そのタイミングを中々つかめないでいた。
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