あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 高見主任の優しさの期限までの間、私は色々なことを考えた。


 仕事としてフランス留学を考えるとは自分の飛躍のチャンスだと思う。フランス留学の先にあるのは自分の研究者としての成功の鍵であり、私は主任研究員としての地位が約束されるだろう。


 でも、期間は二年。


 今の時期に小林さんと離れてフランスに行くことになると、きっと、私の大事な恋は簡単に泡のように消えるだろう。二人が離れて暮らしても大丈夫なくらいの思い出も何もかもが足りない。フランス留学に行くことは小林さんとの破局を意味している。


 小林さんの私への思いを疑っているだけではなく、現実的に考えて『付き合い始めてすぐの超遠距離恋愛』が続くとは思えなかった。長く付き合った恋人同士でも危うくなるのに、付き合い始めて少しの私と小林さんの間では別れの確率が多いと分析してしまう。


 だからと言って、小林さんの優しさに付けこむように『待っていて欲しい』ともいえない。


 私は自分勝手な決断をしていた。


 それはフランス留学を断るということ。
 私は恋と仕事を天秤に掛けて…自分の恋を取ったのだった。自分が今、一番居たいところに居るためにどうしたらいいのかと思うと、それがすべての答えだった。


 小林さんと一緒にいたいと思う気持ちが一番強かった。

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