あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「いえ、私もキリがいいところまでしたかったので。別に中垣先輩に付き合って残業をしていたわけじゃないので気にしないでください」


「でも、小林が待っているんじゃないか?」


「大丈夫です。でも、終電間近なので先に帰ります」


「ああ。俺はもう少ししてから帰るから」


 今日の中垣先輩は気合というのもあるけど、研究のキリが悪いのだろう。帰ろうとする気配は感じさせない。このまま朝までのコースのような気がする。でも、何を言っても聞かないのは分かっているのについ言ってしまった。


「食事くらいはきちんとしてくださいね」

「ああ」

「ではお先に失礼します」

「ああ、お疲れ」


 そういうと中垣先輩はまた、パソコンの画面に視線を戻す。そんな真面目すぎる中垣先輩を置いて研究所を出たのはかなり遅くなっていて、駅までの道を急がないと私は乗り損なってしまいそうだった。辺りは真っ暗で外から研究所を見ると研究室の明かりが点いているのは少ない。その中の一つが私の研究室で一番端にあるにも関わらず煌々と明かりを光らせている。


 私が居なくなった研究室で中垣先輩は研究に打ち込んでいることだろう。その努力が中垣先輩の数々の成果となっているのは間違いないだろう。本当なら私も一緒に研究を進めたいという気持ちもある。でも、私は小林さんと約束をしている。小林さんは私を縛らないけど、研究所に泊まることだけはしないというのが約束となっている。そんな小林さんの思いを私は大事にしたいと思っていた。

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