あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 それにフランス留学までの少しの時間しかない。その残された少しの時間を小林さんと一緒に居たい。何をするでもなく、ただ、一緒に居たい。一緒に居て欲しい。

 今、小林さんは何をしているだろう。携帯には何も届いてないのだから、今日は自分の部屋に戻り私が引っ越しして来ることが出来るように掃除をしているのだろうか?それともまだ仕事なのだろうか?


 本社営業一課とは場所は違うが、静岡支社でも数字を挙げるというのは一緒のこと。どこであろうと小林さんは自分の心を律し、仕事に打ち込んでいると思う。私がフランス留学になろうと、小林さんの仕事は変わらない。営業という職種はそんなに簡単なものじゃない。下準備を積み重ねていき、その後で一気に成果としてあげていく。それの繰り返しで終わりのない仕事だ。今月が終わってもまた来月の目標が迫ってくる。


 少しの期間だけど、私も営業課に身を置いていたのだから、小林さんの苦労も分かる。いくら優秀な小林さんでも小さな積み重ねをしてないと成果には結びつかないだろう。仕事に甘いことはない。


『お疲れ様です。今、仕事が終わり、研究所を出ました。真っ直ぐにマンションに帰ります。…。』


 ここまでメールを打って、指が止まる。そして、既に真っ暗になった空を見つめてから、もう一度画面に視線を移す。


『…会いたいです』

 絵文字も何もない可愛げのないメールだけど、私には精一杯で、もう一度読み返して、最後に付け足した部分を削ってから、送信しようかと思ったけどやめた。
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