あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「美羽ちゃん。起きて…。かなりヤバい。」

 そんなひっ迫した言葉と共に身体を揺すられたのは私がまだ深い眠りの中にある時だった。真っ白な意識の中で小林さんの声だけがゆっくりとそして確実に私に染みていき、ふわふわとした意識の中で目を開けると大好きな小林さんの顔が見える。

 目を覚まして一番に見るのが一番好きな人の顔を見れるというのはなんて幸せなことなんだろう。そんなことを思いながら微睡の中にいる私を揺らすのは小林さんの声。


「美羽ちゃん。本当にヤバい。早く起きないと会社に間に合わない」


 大好きな顔がいつもの優しさとか穏やかさとは違い、明らかに焦っているのが分かる。でも、寝起きで回転の悪い私の頭ではその状況を把握出来てなくて…。

「何が間に合わないのですか?」

「7時半過ぎている。急がないと会社に遅刻する」


 会社に遅刻…。そのワードが一気に私の頭を覚醒させる。


 私が毎日マンションを出るのは八時。そして、研究所には八時半に到着し研究に入ることが多い。いつもよりも一時間半も遅い時間に起きたということがどういうことなのか分からない私ではない。それに小林さんの勤める静岡支社は研究所よりも遠いからどう考えても七時五十分に出ないと遅刻してしまう。


 二人して寝坊…。これが今の私と小林さんの状況。


 まさか寝坊してしまうなんて思いもしなかった。昨日の夜、目覚まし時計をセットした記憶がないのが悔やまれる。


「遅刻!!」

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