あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私の気持ちを加味してくれてのこの中垣先輩に感謝をするしか私にはない。本来なら私に来ていた話なのに、小林さんのことがあるからと私は仕事よりも恋愛を取った。フランス留学を断っても惜しくないほどの思いを私は小林さんに持っている。今の私は日本を離れることなんて考えることは出来なかった。


「わかりました。頑張ります。あの、所長には私から言った方がいいですか?」


「別に坂上は候補の一人であって、決定された研究員ではないから何もする必要はない。俺が所長に言うから」


 中垣先輩と私との会話はそこで終わりだった。その後は研究のことについて聞かれるけど、それ以外の話はなく、いつものようにお互いに静寂の中パソコンに向かう。中垣先輩はそれ以上何も聞いてこなかった。中垣先輩から所長に言ってくれるならわざわざ高見主任の手を煩わせる必要はないとは思うけど、一応メールだけはしておいた方がいいと思う。


 でも、あっけないほどの簡単なやり取りで終わった会話に私は肩を撫で下ろす。それは私なりに緊張して言葉を発していた。私の緊張は他所に、中垣先輩はいつもと変わらない。キーボードの上に指を躍らせていた。


 考えてみればフランス研究所としては私よりもかなり有能な中垣先輩が来るなら大歓迎だと思う。でも、静岡研究所は大きな損失になるのだから私に課せられた責任は重くなる。


 私は自分が選んだ道を歩く。

 その横にはずっと小林さんが居て欲しいと思わずには居られなかった。




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