あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 駅とは反対の方にゆっくりと歩く中垣先輩の後姿を見てから、私は駅の方への道を急ぐ。研究所からバタバタ出てきたので、まだ、小林さん宛のメールが出来て居なかった。毎日、私は研究所を出る前に必ずメールをするようにしている。


『今、仕事が終わりました』


 毎日、同じようなメールを打ち、それが送信終わると溜め息を零すのも日課になっていた。出来ればもっと可愛げのあるメールを打ちたいと思うのに、こういう時に私の恋愛スキルのレベルの低さが露呈される。どうしてもっと可愛いメールとかが出来ないのだろうか?せめて、メールの最後に絵文字を入れるなりすればいいと思うのに、つい、簡単な業務連絡のようなメールを送ってしまう。

 

「…。もっと可愛らしいメールが打てればいいのに。これって業務連絡みたい。」


 送信済みになった携帯電話の画面を見ながら溜め息をもう一度零してから濃紺色の空を見上げる。濃紺色の空には綺麗な星が瞬いていた。でも、星の瞬きが変わらないように、私もそんなに簡単には変われないし、星の動きが緩やかなように私も緩やかだった。


 でも、少しでも…。明日こそは…。小林さんに可愛いと思われる女の子になりたい。


 駅までの道は平坦な道でその両脇にはたくさんの店が並んでいる。時間が時間だけにすでに飲んでいる人もいたりして、駅に近付く度に賑やかさを増していく。小林さんと同じようなスーツを着た男の人もたくさんいて…。スーツを見ただけで小林さんに会いたくなる。
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