あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 最初は優しく緩やかなのに次第に激しく甘さを増していく。徐々に会話はなくなり、お互いの吐息が寝室の闇に溶けていく。小林さんに甘く声を響かせながら、啼かされ続けて、身体が動かなくなることもしばしばで、誰にも邪魔されない二人だけの時間を過ごしていた。


 小林さんは最初の頃よりももっと私を求めるようになっている気がする。ベッドに居る睡眠時間以外の時間は全て小林さんの腕の中に居る。元々、野球をしていたその身体には有り余るくらいの熱が込められていて、私は最後まで意識を保っていることが難しい。


「美羽。愛している」


 そんな吐息混じりに耳元で甘く囁かれると、身体の奥がまた熱を持つ。身体がぴったりと離れないように縛られると緩やかにそして激しく私は愛された。知らなかった愛を感じ、私は翻弄される。


 一緒に過ごす時間を重ねていく度に離れたくないと思う気持ちが零れそうになる。恋というのは自分が思っていたよりももっと私の身体の奥底に染みついていた。


『傍に居たい』


 そんな我が儘が溢れそうになる。


 そして、明日はフランスへ出発という夜になっていた。



 朝から何か特別なことをするのではなくて、一緒に二人だけの時間を過ごしていた。一緒に起きて、一緒に朝食の準備をして。


 一緒にテレビを見て、一緒に笑う。
 そんな何気ない一日を最後に選んでくれた小林さんの優しさを私は身体中で感じる。この人を好きになって本当によかった思った。



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